「オウンドメディアのキーワード選定」で検索すると、どの解説記事もだいたい同じ順序で書かれています。目的を決めて、ペルソナを設計して、キーワードツールで洗い出して、検索ボリュームと競合性で絞る。書いてあることは、確かに正しい。でも、その通りにやってみたあとに、なんとなく手応えがない気がする。選んだキーワードが当たっているのかわからない。選んだ通りに記事を出しても、事業への貢献が感じられない。その感覚は正しいんです。
この記事で書きたいのはシンプルなことで、認知拡大やファン化を目的にしているオウンドメディアに「売るためのSEO」の方法論をそのまま当てはめても当たるキーワードは選べない、ということです。
では、どう選べばいいのか。その考え方を実務目線でまとめます。

田口 靖恵|Content Strategist/SEOコンサルタント/ウェブ解析士(個人事業主)
運営:INGTACT(コンテンツ設計・SEO支援)
X(https://x.com/ami_lier)
独学でのWordPressから、個人メディア運営・アフィリエイト事業(成果報酬型広告)を通じ、サーバー設定やSEOに有利なディレクトリ構造(URL階層)の設計までを、すべて実戦の中で習得してきました。
また、BtoBツール(SaaS)やECサイトなど、複数の企業案件におけるディレクション実績を持ち、制作チームとの連携作法も熟知しています。
自身のメディアを収益化してきた経験と、企業の制作現場を知る強みがあるからこそ、発注者様と同じ目線で「検索エンジンを考えた構造」と「売上に繋がる導線」、そして「成果を生むコンテンツ体制」を設計・実装できます。
自身のメディア運営でInstagram・TikTok・Xの発信を実践。
Instagram1投稿29.8万PV・TikTok42.7万回再生・X88万インプレッションを達成しています。
現在は企業様のWebプロデューサー兼SEOコンサルとして、その実践的なノウハウを提供しています。
売るためのキーワード選定が認知・ファン化型メディアに合わない理由
多くの解説記事では、キーワードを「Knowクエリ(調べたい)」「Goクエリ(行きたい)」「Doクエリ(したい)」「Buyクエリ(買いたい)」の4つに分けます。そして、記事コンテンツには「Knowクエリ」が向いていて、最終的には「Buyクエリ」へ誘導しましょう、という話になる。
これはECサイトや、比較検討段階のユーザーを獲得したいサービスの話としてはよくできています。でも、ここに載っていない構造があるんです。
オウンドメディアを運営している企業の中には、「このメディア経由で商品を買ってもらう」ことがゴールではない場合があるんです。
たとえば、自社の商品が全国の店舗に並んでいて、そのお店に足を運んでもらうことがゴール。あるいは、商品を売るためではなく、ブランドへの共感を育てて、数年後の選択肢に入れてもらうことがゴール。あるいは、自社の業界そのものに興味を持ってもらって、長い時間をかけてファンを増やしていくことがゴール。
こういうメディアにとって、「Know→Buy」のファネルはそもそも外れています。ユーザーは商品を買う検討段階にいない。それでもメディアに来てもらって、読んでもらって、覚えてもらう必要がある。
この場合、SEOの教科書が前提にしている「検討段階」モデルは通用しません。結果、その通りにキーワード選定をしても、選んだキーワードが認知やファン化につながらないんです。「SEOのやり方通りにやっているのに手応えがない」という違和感は、この構造のズレから来ています。
認知・ファン化が目的のとき、ゴールは検索順位ではなく“記憶に残ること”
認知拡大やファン化を目的にしているメディアにとって、本当のゴールは何か。
検索結果で1位を取ることではありません。1位で1回読まれることよりも、「この話題ならあのメディアで見た」「また出てきた、このメディア!」と、何度も出会ってもらうことのほうが、認知には効きます。
広告の世界で古くから言われる「スリーヒット理論」があります。同じメッセージに3回以上接触して、やっと記憶に残り始める、という考え方です。SEOの文脈で言えば、1つのキーワードでトップ1位を取るより、関連する小さなキーワードで何度もSERPに出てくるほうが、読者の中にブランドが刷り込まれていく。
わかりやすく単純に言ってしまえば…検索ボリューム1,000のキーワードで1位を取って、1,000人の流入を得る。これも良いです。でも、そのうちの多くは1回読んで離れていく。一方で、ボリューム50のキーワードを20本取れば、同じ話題に興味のある人と何度も接触できる設計になります。読者はまた別の切り口で検索するたびに、同じメディアに辿り着く。そこで初めて「このメディア、このテーマに強いんだ」と認識が生まれます。
認知・ファン化型メディアが本当に欲しいのは、数字の大きいキーワード1本ではなく、同じ読者と繰り返し出会える言葉の束です。ここで見るべき指標は、検索順位でもPVでもなく、「同じ読者に何回会えているか」のほうに近い。
「数字は伸びたのに事業への貢献がない」という感覚は、ここが設計できていないときに出てきます。
どんなキーワードを選ぶべきか|3つの視点
では、認知・ファン化型メディアが実際にキーワードを選ぶとき、何を見ればいいのか。INGTACTで実務を回しているときに使っている視点を、3つに分けてお伝えします。手順の細かいところまでは書けませんが、視点を変えるだけでも、候補に挙がるキーワードはかなり変わってきます。
視点① ペルソナからではなく、既存顧客・ファンの言葉から逆算する
多くの解説記事では、ペルソナ設計から始めることが推奨されています。架空の代表的ユーザー像を1人作って、その人が検索しそうな言葉を考える。
でも、この方法には落とし穴があります。ペルソナは頭の中で作った人物なので、実在する顧客が使っている言葉とズレやすい。あなたの思ったペルソナはあなたの思ったペルソナでしかない。
INGTACTでおすすめしているのは、ペルソナを作る前に、実在の顧客・ファンの言葉を集めることです。SNSで自社商品についてどう語られているか。レビューサイトでどんな表現が使われているか。営業担当者が「お客様からよく聞く質問」として持っている生の言葉。カスタマーサポートに届く問い合わせの中の、固有の言い回し。
こういう言葉は、ユーザーの属性にも関わりツールには出てきません。でも、この言葉を使っている人がいるということは、同じような言葉で検索する人もいるということです。視点の出発点をツールからではなく「実在する顧客の声」に置くだけで、候補リストに並ぶ言葉の質が変わります。
「ツールが出してくるキーワードがうちの顧客の使う言葉じゃない気がする」——この違和感は、無視してはいけないサインです。
視点② ツールが出すキーワードは候補ではなく消された後の痕跡と捉える
ここが今回、一番お伝えしたいことです。
人が何かを検索しようとするとき、最初に頭の中で組み立てているのは、実はもっと長くて、もっと具体的な言葉です。たとえば、「うちのメディア、記事は出しているのに、なぜか流入が増えなくて、でも競合サイトには勝てている気がするんだけど、具体的に何が違うのか知りたい」みたいな、自分の状況と疑問が全部入った長い文章。
でも、検索窓に打ち始めると、オートコンプリートが候補を出してくれます。「オウンドメディア 流入 伸びない」。ユーザーは「あ、これこれ。これでいいや」と、候補を選ぶ。頭の中で組み立てていた10個分の疑問が、5文字で終わります。
これが、毎日、世界中で、何億回も起きています。
そして、検索エンジンに残るのは「消された後の短い言葉」のほうです。キーワードツールがデータを取っているのも、この残された短い言葉です。ボリュームとして集計されているのは、本心ではなく、妥協された言い換えです。
ここが重要で、みんな同じツールを見ているから、みんな同じ「消された後の言葉」を追いかけているということになります。SERPが均質化するのも、順位争いが激化するのも、全員が同じ場所で戦っているからです。
ツールが出すキーワードは、候補リストそのものとして扱ってはいけません。「本心にたどり着くための入り口」として使うものです。「オウンドメディア 流入 伸びない」という短いキーワードをきっかけに、その奥にある「うちのメディア、記事は出しているのに、なぜか流入が増えなくて…」という本心の長い言葉を想像する。そこからキーワードを考え直す。このひと手間で、選び方が根本的に変わります。
視点③ 認知・ファン化を狙うなら、検索ボリュームよりも何度も出会う言葉を選ぶ
視点②で掘り起こした「本心の長い口語」は、ツールで見ると検索ボリュームが0か1かくらいしかありません。ツールは「消された後の言葉」しか数えていないので、当然です。
そこで多くの人が「ボリューム0なら書いても意味がない」と判断する。でも、認知・ファン化型メディアが本当に欲しいのは、前のセクションで書いた通り「同じ読者と繰り返し出会える言葉の束」です。
ボリューム1,000のキーワードを1本取るより、ボリューム20〜50の言葉を20本取るほうが、同じ読者との接触頻度は上がります。そして、ここがポイントですが、小さいボリュームのロングテール領域は競合が入ってこないんです。大手のSEO会社はボリュームが大きいキーワードを優先するので、小さな本心口語は誰も取りに来ない。
結果、記事を出せば、そのキーワードで1位になります。1位になっているから、同じ読者がそのテーマに関心を持つたび、また同じメディアに辿り着く。これが認知の積み上げです。
「選び方の正解がわからない」と感じている方は、正解を1つのボリューム大キーワードに求めないでください。正解は、小さな本心の口語を何十本も束にすることのほうにあります。
AIO時代は、この「認知・ファン化型キーワード選定」と相性がいい
ここまでの話、「ボリュームの小さい口語を狙えと言われても、本当に読者に届くのか」と思われるかもしれません。私もこれまでいくら提案してもクライアント様から「もっとボリュームが大きいキーワードに変えてください」と言われて却下されたことがあります。
でも…結論から言うと、届きます。しかも、この1〜2年で急速に届きやすくなっています。
Googleの検索結果に、AI Overview(AIO)と呼ばれる要約機能が登場したのはご存じの通りです。ユーザーが検索したキーワードに対して、AIが複数のサイトから情報をまとめて、検索結果の最上部に回答として表示するものです。
このAIOの裏側で何が起きているかというと、AIはユーザーが入力した短いキーワードだけでなく、ユーザーが本当に知りたいであろう長い疑問文を想定して、それに答える形で情報をまとめています。検索窓で「オウンドメディア 流入 伸びない」と打たれても、AIは「この人は、自社のオウンドメディアの流入が伸びない原因を知りたがっているのだろう」と、本心の長い疑問に翻訳して動いています。
つまり、AIOが参照するのは「消された後の短い言葉」ではなく、「本心の長い疑問」に答えているコンテンツのほうです。そして、その「本心の長い疑問」にピタリと答えているコンテンツは、ツールのボリュームでは測れない小さな口語クエリで書かれた記事だったりします。
INGTACTでは自サイトで実験的にこの方向のコンテンツを作り続けていますが、Google Search Consoleで確認できる限り、ツールには出てこない口語クエリで、実際にAI経由の流入や表示が発生しています。これは認知・ファン化型メディアにとって、とても大きな追い風です。
従来のSEOでは「ボリューム0は無価値」だった領域が、AIO時代には「ボリューム0だけどAIに引用される価値ある領域」に変わってきている。認知・ファン化を目的にしているメディアは、本来この方向と相性がよかったのですが、AIOがそれを技術的に裏付けた、という整理がしっくりきます。
AI検索への対応については、「AIO対策とは?SEOとの違い・具体的な方法をわかりやすく解説」や「自サイトがGoogle AIに引用された話」でも触れていますので、あわせて読んでみてください。
よくある失敗|ボリュームを追いかけて読者とズレていくパターン
視点を変えていただくために、INGTACTが現場で見てきた「よくある失敗」を3つ紹介します。どれも担当者の努力不足ではなく、方法論そのものが認知・ファン化型メディアに合っていなかったことが原因です。
パターン1 ツール任せで候補を絞ってしまう
キーワードツールで関連語を洗い出して、ボリュームの大きい順にエクセルに並べる。上から順に「書けそう」「書けなさそう」で仕分けして、書けそうなキーワードから記事化していく。
この進め方だと、自社の世界観から離れたテーマが記事になりやすいです。ボリュームがあるからという理由で書いたテーマは、他のメディアでも同じ理由で書かれている。結果、どこにでもある記事が積み上がって、メディア全体の印象がぼやけます。今後はこのやり方は特に良くないです。
パターン2 競合の記事を丸ごと真似る
ターゲットキーワードで上位表示されている記事を3〜5本分析して、共通して書かれている要素を抽出し、同じ構成で書く。SEOのセオリーとしては正しいやり方です。
ただ、認知・ファン化型メディアで同じことをやると、競合と見分けがつかないメディアができあがります。読者から見たときに「どの会社のメディアか」が記憶に残らない。これが積み重なると、メディアとしての独自性が薄れていきます。
パターン3 PVだけ追いかけて、事業との接点を失う
成果指標をPVに置いて、ツールで引っかかるキーワードを追い続ける。PVは順調に伸びる。でも、来ているのは自社の顧客候補ではない層です。事業への貢献が見えなくて、社内で「このメディア、意味あるの?」と言われ始める。
「数字は伸びたのに事業への貢献がない」と感じている場合、ほぼこのパターンです。PVが伸びていることと、認知・ファン化が進んでいることは、イコールではありません。
この3つのパターンに共通しているのは、ボリュームという数字の強さに引っ張られて、自社の読者を見失っている、ということです。認知・ファン化を目的にしているなら、追うべきは数字の大きさではなく、読者の本心と何度出会えているか、です。
INGTACTにできること
ここまで読んでいただいて、「自社のキーワード選定を見直したい」と思われた方に、INGTACTが提供できることをまとめておきます。
- 御社オウンドメディアの現状診断(記事・流入・コンテンツ方針・GSC/GA4データの読み解き)
- ツールでは拾えない、本心の口語キーワードを手で発掘する作業
- 認知、ファン化を目的にしたメディアに合わせたキーワード設計
- コンテンツディレクション(記事設計・品質チェック・ライター管理)までの伴走。社内で書くスタイルにも、外注するスタイルにも対応します
- 御社のゴールに合わせた診断・設計のメニューは、オウンドメディア編集長・Web担当者向けのご案内ページにまとめています
詳しく話してみたい方は、相談から始めていただけます。
よくある質問(FAQ)
まとめ
認知拡大やファン化を目的にしているオウンドメディアでは、キーワード選定の土台から考え方を変える必要があります。
ツールが出す数字は「消された後の言葉」の集計にすぎません。本心の言葉は、その手前に消えています。だから、ツールを参考にしつつも、候補そのものには使わない。実在の顧客が使う言葉、頭の中で組み立てられている本心の長い口語、何度も出会うための小さな言葉の束。ここを拾っていくことで、メディアは少しずつ「この話題ならこのメディア」と認識される存在になっていきます。
AIO時代に入って、この方向は追い風に乗りました。ツールには出てこない言葉でも、AIが本心の長い疑問と結びつけて、引用してくれるようになっています。
自社メディアのキーワード選定を一度見直したい、と感じたら、INGTACTの診断を試してみてください。御社のメディアを一度、ツールの外側から見直してみる。そこから、次の一歩が見えてくるはずです。
関連記事:オウンドメディアの検索流入が伸びない方へ|INGTACT
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